祠に刻まれたタコ、カニ、エビ!?謎の迷宮「新田神社」!

「なんだ、コレは!?」

祠にきざまれた謎の彫刻。それは隠れキリシタンが残した暗号なのか?はたまた…

謎深まる新田神社に今迫る!

謎の迷宮へ

大籠町・新田神社の境内

長崎市南西部に位置する城下町風情ただよう深堀地区。そこから車で海沿いを南へ走ること約10分。 長崎港の外海をのぞむ絶景を堪能しているうちに目的地新田神社に到着する。

さっそく境内にお邪魔してみよう。

まずは参拝を済ませる。次に拝殿前にたつ鳥居や石灯籠を観察すると、長い風雪をきざんでいるがわかる。しかし、拝殿や狛犬はわりと新しいものだ。 全体的に由緒は感じるが、ことさら珍しいやしろ(社)とは思えない。    
 
 
タコ、カニ、エビが彫られた新田神社の石祠
 しかし、拝殿の奥へまわってみると… 何やらおもむきのある石祠(本殿)が鎮座している。      
新田神社石祠のタコとカニ
 その石祠をまざまざと凝視してみると、 「んンンン?」


大籠町・新田神社のタコの装飾

 「あ、あれはタコ(屋根正面下部)   
 
                          大籠町・新田神社のカニの装飾
 「カニだ!」(屋根正面上部)      
 
 
 
 「伊勢エビもか!」 (屋根左側面)  
 

    大籠町・新田神社の伊勢エビの装飾

「もう一丁、伊勢エビ!!」(屋根右側面)

うーん、精巧に彫られている(思わず美味しそうだと思った筆者は、煩悩のかたまりなのだろう) 。精巧に彫られたこれらの海産物は、はたして何を意味しているのか???    

隠れキリシタンによる暗号か?

「フランシスコ・ザビエル」

言わずと知れた、日本でキリスト教を初めて布教した人物だ。そのザビエルが来日する前に、カニにまつわる伝説をインドネシアのセランでのこしている。

3. 失われた十字架 1546年(41才) アンボイナからセラン島へ渡る途中暴風にあって船は沈没しそうになった。

サビエルは胸にかけた十字架をはずし海中に浸して神に祈った。すると暴風は静まったが紐が切れて十字架は波の中に消えていた。その後セラン島に上陸すると海中から一匹のカニがその十字架をはさんではい上がってきたので彼は心から感謝の祈りを神に捧げた。
引用 フランシスコ・サビエルの紹介

この伝説と石祠のカニの彫り物を関連させ、隠れ(潜伏)キリシタンとの因果関係を論じる識者がおられる[1]新田神社の石祠などの不思議な図象  長崎市大籠町 – みさき道人 ”長崎・佐賀・天草etc.風来紀行” – Yahoo!ブログ

実際、

  1. 江戸時代直前(1600年)の深堀には、600名のキリシタンが存在した[2]平 幸治 (著)、『肥前国 深堀の歴史』、2014年、長崎新聞社、267ページ
  2. 江戸時代後期には、この神社近くの善長谷の集落に、樫山(現在の長崎市樫山町)から隠れキリシタンが移住している[3]「善長谷教会」 ~遠藤周作が愛した隠れキリシタンの里

このように、この周辺一帯でキリシタンが存在したことは事実だ。

絹笠山に鎮座する、隠れキリシタンが信仰していると噂されるカニに乗った金比羅神像絹笠山に鎮座する隠れキリシタン像のカニ

さらに… ザビエルとカニの伝説にもとづいて、隠れキリシタンの信仰対象ではないかとされる例が他にもあるのだ。

それは島原半島にそびえる絹笠山に鎮座する、カニに乗った金比羅神像だ。この仏像は、新田神社のものと同様、隠れキリシタンの信仰対象ではなかったかと取りざたされている[4]絹笠山の隠れキリシタン像 – 三鈷の松

浮かび上がる疑問点

しかし、キリシタン関与説には、いくつかの素朴な疑問点が浮かび上がる。ざっくりと述べれば、

1.海産物が装飾された石祠(本殿)前の石灯籠には、慶応4年(1868年)建立の刻印がある。石祠の建立時期も同時期とかんがえるのが妥当だから、1⃣とは時期があわない。

そのため可能性がのこされたのは、2⃣ の隠れキリシタンということになる。

2.その2⃣の善長谷のキリシタンは、明治になってカトリックとカクレキリシタンとに袂を分かれている。そしてそのカクレキリシタンは、昭和10年代までは江戸時代からつづく(俵石)八幡神社の例祭を執り行っていたことが資料で確認できる[5]・宮崎 賢太郎 (著)、『カクレキリシタン オラショ−魂の通奏低音』、2001年、長崎新聞新書、254ページ
・三和町、『三和町郷土誌』、三和町、1986年、717ページ

それではなぜ彼らは信教の自由が許された明治以降に、八幡神社と同様に、新田神社を祀らなかったのか[6]現在でもカクレキリシタンによって祀られている「枯松神社」(長崎市下黒崎町)の事例がある

という2点だ。

したがって、キリシタン関与説にはやや疑問を禁じえない。それをふまえて、次ページに筆者の考えを述べてみたい。  

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脚注・出典   [ + ]

1. 新田神社の石祠などの不思議な図象  長崎市大籠町 – みさき道人 ”長崎・佐賀・天草etc.風来紀行” – Yahoo!ブログ
2. 平 幸治 (著)、『肥前国 深堀の歴史』、2014年、長崎新聞社、267ページ
3. 「善長谷教会」 ~遠藤周作が愛した隠れキリシタンの里
4. 絹笠山の隠れキリシタン像 – 三鈷の松
5. ・宮崎 賢太郎 (著)、『カクレキリシタン オラショ−魂の通奏低音』、2001年、長崎新聞新書、254ページ
・三和町、『三和町郷土誌』、三和町、1986年、717ページ
6. 現在でもカクレキリシタンによって祀られている「枯松神社」(長崎市下黒崎町)の事例がある

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